バセドウ病は1840年にドイツのカール・フォン・バセドウ先生が報告された病気です。
バセドウ病は20~30代の若い女性に多い病気で、男女比は1:3~5くらいと言われています。
原因
自己免疫の異常により甲状腺を刺激する自己抗体が産生され、甲状腺ホルモンが過剰産生されることで発症します。
なぜ自己抗体が産生されるのかはよくわかっていません。
症状
代表的な症状は①甲状腺の腫大、②頻脈、③眼球突出の3つです。
ただし、バセドウ病にかかったからといって、必ずこの3つの症状が全てあらわれるわけではありません。
甲状腺ホルモンが過剰になり代謝が亢進するため、動悸・多汗・体重減少・疲労感・手の震え・息切れなどの症状がおきます。
放置しておくと、病状が悪化し、命に係わる状態に至ることもあります(甲状腺クリーゼ)。
治療
薬物治療、放射性ヨウ素内用療法、手術の3つの治療法があります。
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①薬物治療
飲み薬を使って甲状腺ホルモンの産生を低下させ、症状を軽減させます。最も簡便で外来で治療が始められるため、多くの場合に第1選択となります。
しかし症状が落ち着いても完治したわけではないので、定期的に検査を行いながら、数年間かけて飲み薬の量を調整していきます。
飲み薬を2年以上継続しても中止できる目途が立たない場合は、別の治療法を検討することもあります。
飲み薬は副作用が生じる可能性があります。
湿疹・かゆみ、肝機能障害や無顆粒球症という合併症があらわれることがあります。
とくに無顆粒球症は白血球の顆粒球が減少し、感染症にかかりやすくなるもので、放置すると大変危険です。
そのため、飲み薬を開始後2~3か月間は定期的に血液検査を受けていただきます。
また、38℃以上の高熱やのどの痛みなどが見られた場合は、すみやかに医療機関を受診していただく必要があります。
- ②放射性ヨウ素内用療法
甲状腺にはヨウ素を取り込む性質があることから、放射性ヨウ素の入ったカプセルを飲んで甲状腺の細胞を壊す治療法です。
効果が確実であり、甲状腺の腫れも小さくなりますが、再発がないように甲状腺機能低下をめざすと甲状腺ホルモン薬の服用が必要になる場合があります。
ただし実施できる医療機関が限られており、またバセドウ病による眼の症状がある方や妊婦・授乳婦は対象外となります。
- ③手術療法
手術療法は甲状腺を全摘出する方法です。
最も早く確実に治療効果が得られますが、手術後は甲状腺ホルモン薬の服用が必要になります。
欠点としては、入院が必ず必要であること、手術痕が残ること、手術合併症(反回神経麻痺、副甲状腺機能低下症など)が生じるリスクがあることなどがあります。
日常生活の注意事項
- ①喫煙
喫煙者の方は、眼球突出などの眼症状があらわれやすくなったり、悪化したりします。
また治療効果も弱くなることがあるため、禁煙を推奨します。
- ②激しい運動
甲状腺ホルモンが高い状態のときは、代謝が亢進していて心臓への負担が大きくなっていますので、激しい運動は避けてください。
治療により甲状腺ホルモンが落ち着いてきたら、徐々に体を慣らしていきましょう。
- ③治療中断
治療開始後、自覚症状が治まってくると完治したように感じて、自己判断で内服や通院を中断してしまう方がいらっしゃいます。
そうすると数日で甲状腺ホルモンが元の状態に戻ってしまうことがあります。
また、甲状腺クリーゼという重篤な状態に陥り、生命に危機が及ぶことがありますので、主治医が内服中止の許可を出すまでは継続しましょう。